相愛世界 いざと言うときお互いに思うひとがいないとたちまち脱落する世界を描いていた。 伴侶のいるひとはきっと安泰だ。だけどそうじゃないひとはどうなるのか。 子供は親を思っても、親はすでにパートナーがいるから子供は助からない。 自我のない子どもは大部分船に乗り遅れる。 二次元に恋をしているひとは無駄と分かっていても胸に居るひとを思いやる。 相手が知りもしない自分を選ぶことはないのに。 それでも誇りを持って最後まで愛を貫いて死ねるなら本望と思う。 実らないなら綺麗なままでもいいと思う。 相愛の相手などそのひとにはどうせいないのだから仕方ない。 そして人間が半減した世の中で誰かのために消えた人の数が報道される。 誰かが思ってくれたのに、自分はまんまと別の人と相愛になり生き残る。 消えた数は所詮数字でしかなくて悼むこともできない。 でも残った狭い世界では相愛しか存在しないから孤独はない。 平和で優しい世界。 たくさんの命を踏みにじって誰かのための存在という存在意義がある人間だけが生き残った世界。 屍の上に生えた桜のような醜くて美しい世界。 そんな世界を望むでもなく長い間思っていた。