土色と疑念





ゴミを舐めるように働いた。


光のない店舗は闇が影がヘドロのように私にまとわりついて、息つく暇もなく走り回った。

ぼろぼろの靴を履き潰し、ゴミ溜めのような部屋に帰る。

部屋には大の男たちが窮屈そうに座っており、私は着替えもせず唯一敷かれた白いシーツに身を滑らせた。

真ん中に陣取った先客を追いやるように。


隣に寝ていた男性が朝起きたら亡くなっていた。

私が帰ってきたとき、すでに彼は危篤だったらしいのだ。

誰もが私に疑心を向けるなか、一番近くで彼の死を知りながら馬鹿な私は冷たい体にかじりついて悲鳴のように主張した。


彼は生きてる!死んでなんかない!生きてる!生きてる!


かちかちに凍った体を揺すって、必死になって叫んだ。

土色の肌が目についた。

誰もが、お前が殺したんだろう、と言って私を責めた。

この手に男をくびり殺すだけの力があるわけもないのに。


私はそれでも 生きてる!生きてる!と主張を続けた。

彼が息をしていないのは勿論分かっている。

彼の死を受け入れたくない程彼と近しく縁のある人間でもない。

愛していた訳じゃない。

殺したことへの疑念に対し、私は気違いのように土色の生を主張した。

私の正義や潔白などどうでもいい。

彼は生きているのだと。


泣きわめく私を置いて、屈強な男たちは部屋を出ていった。

疲れはてた私は少し眠り、途方に暮れて彼らが去った部屋へ顔を出した。

男の一人が食事を取るように促し、私はかさついた畳に腰をおろす。


男は表情の読み取れない顔で語り出す。


彼は力もなく目障りな存在だった。

しかし頭脳と欲だけはひと一倍で食えない男だ。

いずれ彼が離反し我らに刃を向けたとき、彼は我らの情報を喜んで売るだろう。

忠誠心など微塵もなく、金が全ての男だ。

ここで消えてくれて良かったかも知れない。


君は悪くない。

男は長い髪を背に余し、嘘臭い美しい笑みでそう言った。

隣の男も口元だけ綺麗に歪めて笑う。

ブロンドがさらりと揺れて綺麗だった。


現実で揺れる心などどうでも良くなった。

よく知りもしない彼が死んだことは私はどうだっていいことで、責められるから隠そうとしたのみ。

殺したと疑われた時、ああこいつさえ死ななければ私はこんなこと言われなかったんだ。

こいつが生きてさえいれば。と。


だから男たちが私を責めなくなった今、私の主張が否定されようがされまいが関係はない。

放っておいてくれればそれで良かったのだから。

手足が、内臓が、脳が動かなくなれば死人。

人が判断できるのは所詮そこだけだ。

なんて安易な判断だろう。

これまで生きてきて誰かと築いた関係や絆は思い出になるのだ。

そんな安直な判断では酷すぎる気がする。

それでも器が動くのを止めれば自我も眠らざるを得ない。


今日も私は闇に消える。

ゴミを舐めて金を貰う。


私こそこんな日々で、生きてるのか死んでるのか分からない。

でも、体が動いているのだから生きているのだろう。