助手席と闇
助手席に身を置く
いつもは心地よいはずの場所が深い雪の壁に遮られて空も薄暗い。
だが闇ではなく明け方でも夕方でもない。
狭い曲がりくねった道路に車がすれすれでぶつからずに通りすぎる。
カーブの度、対向車が来る度、いちいち恐怖に身を固くする。
運転手は狂ったようにハンドルを叩き回し走り抜ける。
首の座らぬ子供のようにぶらんぶらんとそれを揺らし自ら喉を圧迫する。
彼女の暴言はいつも通り衝撃的でいつもより過激だった。
しかし彼女は嘘を言わないので全てそれは真実で現実だ。
妬み嫉み羨ましさ、彼女の苦悶を知らないばかどもは目を潰して亡者のように歩み寄る。
己の一方的な解釈でよくもそこまで性悪になれたものだ。
彼女は怒りや悔しさ悲しみまで余さず吐き出す。
彼女は決して強くはないのだ。
しかし身ひとつで食べてゆくにはこの世界は辛すぎた。
彼女は決して強くはないのに。
彼女は決して強くはないのに。
路傍で見知らぬ男が嗤う。